COP10&COP16全国説明会@仙台レポ

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生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)及び
気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)全国説明会(仙台会場)
○日     時:平成23年2月22日(火)18:00〜20:15(予定より15分延長)
○場     所:仙台市 エル・パーク仙台 6Fスタジオホール
○プログラム:(1)基調講演「COP10及びCOP16の結果報告と今後について」
             南川 秀樹氏 環境省 環境事務次官 
           (2)パネルディスカッション
             パネリスト  南川 秀樹氏
                        見上 一幸氏  宮城教育大学理事・副学長
                        長谷川 公一氏 東北大学大学院文学研究科教授
            モデレーター 小林 香氏    東北地方環境事務所長
           (3)質疑

昨年開催されたCBD/COP10@名古屋とCOP16@メキシコ・カンクンの結果報告、
今後の日本の環境行政の方針についての環境省主催の全国説明会が、
2月〜3月にかけて全国7か所で開催されています。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13390

環境学習交流センタースタッフも、仙台会場の取材に行ってきました!
環境事務次官による地方での国際会議の説明会は異例のことだそうで、とても貴重な機会です。

当日は定員150人のところ、何と立ち見も出るほど(!)多くの参加者が集まり、
会場が熱気であふれていました。
(参加者は主に企業や宮城県の地球温暖化防止活動推進員、
東北6県のNPO関係者、そしてマスコミが多かったようです)

 

以下、簡単にではありますが、説明会の内容をご紹介します。
(↓続きを読む、をクリックして下さい)
 

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(1)基調講演「COP10及びCOP16の結果報告と今後について」
   南川 秀樹氏 環境省 環境事務次官

cop16-a.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
日本の環境行政は(1)低炭素社会、(2)自然共生社会、(3)循環型社会の3つを柱に
「持続可能な社会」を築き、2012年にリオデジャネイロで開催される
「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」では
リーダーシップを発揮することに焦点を当てて行われている。
政局にもよるが、環境省では「基本的な対策の柱は変えない
(少なくとも2050年までは持続させる)」としている。
 
*COP16について
事前に新聞などの報道で目にしていた限りでは、
進展無く終了し難題は先送り…ともどかしさを感じながら見守っていた方もいたのでは。
会議での攻防や語学力の差による出遅れなど、
実際に交渉に当たっている南川氏の説明から、
国際交渉の難しさを感じた。
 
しかし、一方でカンクン合意は
全主要国が参加する枠組みへの重要な一歩であったことも示された。
京都議定書の第二約束期間については、今後も全主要国の参加を訴える姿勢で臨むとのことだが、
万一、受け身になってしまったり対立関係ができてたとしも、
日本が不利にならぬような対策を練る必要があるようだ。
また、途上国などの各地域に合わせた温暖化対策の必要性を説き、
そうした具体的な対策支援に力を入れていきたいと強調する南川氏の姿が印象的。

南アフリカ・ダーバンで開催される次なるCOP17では、
語学力やリーダーシップも含め、途上国との協力を支える
国際的な貢献ができる日本の人材育成も大きな課題となる。

*COP10について
生物多様性とは、
「地域に固有の自然があり、それぞれに特有のいきものがいること。
そして、それぞれがつながっていること」。

具体的には、
(1)生態系の多様性(森林、河川、湿原、サンゴ礁など)
(2)種の多様性(世界には推定500万〜3,000万もの種が存在するとされる)
(3)遺伝の多様性(例:ゲンジボタルは地域によって発光の周期が異なる)
などに示される。

こうした多様な生態系からさまざまな恵みを受けて、私たちは暮らしているが、
世界から毎年520万ヘクタール(九州と四国を足した面積ほど)の森林が消失、
サンゴ礁は2割が既に失われているなど、
主に人間活動によって生態系が急速に破壊されている。

そうした生物多様性の維持と、持続可能な利用を目的とする条約が
生物多様性条約(CBD)であり、CBD/COPはその参加国の話し合いの場である。

COP10の特筆すべき成果は、
遺伝資源の取得と利益配分(ABS)に関する名古屋議定書が採択されたこと。
これは、例えば他国の天然資源から医薬品などを開発して利益を得た場合、
その天然資源の提供国(主に途上国)にも利益が配分されるといった内容の枠組みである。
(マダガスカル島のニチニチソウの事例が有名)
「途上国と先進国の両方に利益(win-win)となる仕組み」を目指したもので、
これは生態系サービスによる人類の福利と貧困解消への寄与が期待できる。

 

*廃棄物・リサイクルについて
廃棄物・リサイクルも環境行政の重要な課題として説明があった。
産業廃棄物の処理については、岩手・青森県境産廃不法投棄事件に触れながら、
今後はいかに不法投棄をさせない仕組み作り(比較的簡単な手続きで処理できるようにする等)や、
いかに廃棄物を循環させるかが課題とのこと。

また、使用済みの携帯電話やパソコンなどからの、
レアメタル等の有用金属の回収・リサイクルのシステムについて、
平成20年から環境省と経済産業省で検討しており、
今年末を目途に審議の内容をとりまとめるとの報告もあった。

(2)パネルディスカッション

cop16-b.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
*見上 一幸氏
見上氏が所属する宮城教育大学では、環境教育の必修科目を複数設けており、
全国的にも珍しい例とのこと。
ESDが来年度の新学習指導要領に取り入れられることを受け、
環境教育もその中心に位置付けられることから、
子ども達への環境教育の重要性がますます高まっていくこと、
また、教育現場に正しい情報提供を行うことの大切さを訴えていた。
 
*長谷川 公一氏
自身が研究されているフリーライダー問題や
宮城県の脱スパイク運動の成功例を紹介しながら、
家庭レベル、地域レベル、そして政府の温暖化対策とその課題、
自身の活動についてのお話があった。
ストップ温暖化一村一品大作戦が事業仕分けで廃止になったことは記憶に新しいが、
そのように“環境”に係る予算が減じていく中、各パネリストに向けての
「温暖化対策の<希望>をどこに求めるのか?」という問いかけが印象に残った。

2010年度は「低炭素杯」として民間資金によって実施。
岩手県からはいわてバイオディーゼル燃料ネットワークが岩手県代表として出場。

(3)質疑
最後に会場との意見交換の時間も設けられた。
その中からいくつか印象的だったものを下記に挙げる。

「温対法を基にセンター、地域協議会、推進員が柱となって進めてきた
これまでの温暖化対策が、最近になってぶれているように感じる」という意見に対し、
南川氏から「(温対法の)その方針は変えるつもりは無い。
確かに今はぶれているが、現在立て直している状態」との説明があった。
これまでの自分達の活動が、政権交代から低く評価されているのではないかといった危惧が
参加者の中にあったように思うが、事務次官の回答により少し払拭されたのではないか。

 

「省庁の横のつながりでこういった会議を開催して欲しい」といった意見に対しては、
南川氏から「同感。これから徐々に取り掛かる」との回答があり、今後の展開が期待される。
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国際会議の結果と今後の方針について端的な説明があり、
環境行政の最新情報に触れることができた説明会となりました。

これまで国際会議はどこか遠いところで為されているもの、と私自身は感じていました。
今回、環境事務次官による地方での国際会議の説明会という滅多に無い機会を通して、
当たり前のことではありますが、「人間同士が話し合って決めているんだ」
という温度が初めて伝わってきたように思います。
今後、こういった説明会が定期的に開催されることを願います。

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このページは、staffが2011年3月 4日 12:06に書いたブログ記事です。

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